猫伝染性腸炎


猫伝染性腸炎は

猫パルボウイルスに感染することで発症します
この病気は非常に感染力が強くあらゆる年齢のネコが感染します。4ヶ月令以下の子ネコでは死亡率は約75%といわれています。
猫伝染腸炎ビールスは猫から猫への接触により感染します。感染猫の血液、尿、便、鼻からの分泌物、まれにノミを介して感染することもあります
症 状

・発熱
・食欲不振
・嘔吐
・下痢、血便
・脱水症
● 血液検査では重度の白血球数の減少がみられます。
● 重症例では最初の発熱から3-4日で死亡します。
治 療

ウイルスそのもに効果がある薬はありません。そのため脱水症にたいする輸液、制吐剤や下痢止めの投与、細菌感染に対する抗生剤などの支持療法が治療の主体になります。
予 防

猫3種ワクチン、、猫5種混合ワクチンで予防できます
猫カリシウイルス感染症


猫カリシウイルス感染症は

カリシイウイルス感染により猫の呼吸器がおかされる伝染病です。
症 状

・クシャミ
・目やに
・鼻からの分泌物
・歯肉や舌の潰瘍
・関節炎による跛行
通常は症状は軽度ですが中には発熱し衰弱するものもあります。
海外では顔面の浮腫や出血をおこす死亡率の高い全身性強毒性カリシウイルスも報告されています。このタイプのウイルスは通常のワクチンは効果がありません。
治 療

猫カリしウイルスに有効な薬は、残念ながらありません。
治療は抗生剤、点眼薬、点鼻薬などによる症状緩和処置が主体となります。食欲がない場合には強制給餌や輸液療法が必要になります。
予防ワクチンを受けていない同居猫がいる場合は、感染猫を隔離して消毒を徹底する必要があります。
一般的な多くの消毒薬に抵抗性を示します。次亜塩素酸ナトリウム(5%漂白液の32倍希釈)が有効です。
予 防

猫カリシウイルス感染症の予防は、ワクチン接種が有効です。
猫3種ワクチン・猫5種ワクチンで予防できます。
ヘルペスウイルス感染症


猫ヘルペスウイルス感染症は

猫ヘルペスウイルスの感染によっておこる猫の呼吸器感染症です。
ウィルスは主に、鼻粘膜、口腔粘膜、結膜などので増殖し、 感染猫の目ヤニや鼻水などの分泌物と接触することによって感染します。
症 状

・食欲不振
・涙目
・目やに
・くしゃみ
・鼻水
カリシウィルス感染症と似たような風邪の症状が見られますが、 ヘルペスビールス感染症の方が重症で、目ヤニ、鼻水などで顔の汚れが非常に目立ちます。
特に子ネコが感染した場合には、死亡率が高くなります。
回復猫の約80%は体内にウイルスが残り無症状のキャリアとなります。このような猫が何らかのストレスにさらされるとウイルスが活動を始め再発をくりかえします。
母猫が感染していると子猫全員に感染します。

治療開始が遅れたり免疫が低下している猫では角膜炎や慢性副鼻腔炎などを併発します。
病気の経過

適切な治療によりほとんどの猫は2週間以内に症状が消失しますが、
免疫力が不十分な猫は外観は健康そうに見えてもウイルスは神経細胞内に休眠状態で潜伏しており、他の病気やストレスなどで動物の免疫力が低下するとウイルスが活動をはじめ、再発をくりかえします。
治 療

・抗生剤
・輸液
・栄養剤の強制給餌
食欲ががないネコちゃんは食欲が回復するまでは通院治療が必要です。
食欲が回復すると自宅での治療にきりかえることができます。
予 防

猫3種ワクチン、猫5種混合ワクチンで予防できます。
猫クラミジア感染症


猫クラミジアは

クラミジア細菌が感染することによって起こります。
猫の眼の結膜に感染しやすく、1歳以下の子猫でよくみられます。
症 状

・結膜炎
・目やに
結膜炎は、「結膜」という眼球のまわりの粘膜が充血して真っ赤になり、腫れ上がる病気です。
ほとんどの場合、片目から始まって両目へと広がります。
治 療

治療はテトラサイクリン系の抗生剤の内服と点眼
予 防

この伝染病は猫5種ワクチンで予防できます。
猫白血病

猫白血病は

症 状

・食欲不振
・体重減少
・貧血
・下痢
・リンパ節腫脹
・口内炎
・免疫低下
・リンパ腫併発
経 過

感染時の年齢により経過はことなります。
猫白血病感染後の経過

猫白血病ウイルスに感染した猫が、免疫によってウイルスを排除できずに「持続感染」の状態となった場合、その多くが3年以内に免疫不全やリンパ腫などの猫白血病関連疾患を発症するといわれています。
持続感染猫の飼育管理

● 室内飼育にする。
● 去勢不妊手術をする。
● 同居猫がいる場合は感染猫を隔離し同居猫は白血病抗原検査を実施し陰性なら予防ワクチンを注射する。
● 6ケ月ごとの定期健康検査
治 療

ウイルスそのもに効果がある治療法はありません。
症状緩和療法やインターフェロンなど、免疫力を高めるような治療が行われます。
予 防

猫5種ワクチン接種で予防できまが予防効果は80%前後と報告されています。
猫免疫不全症
(猫エイズ)


猫エイズ(猫免疫不全症)は

猫エイズウイルス(FIV)に感染することで発症するウイルス性の感染症です。
猫エイズに感染している猫とケンカなどにより、感染猫の唾液や血液から感染します。
猫エイズが直接的な死因になることは少なく、多くは免疫低下により二次感染が原因で死亡します。
猫エイズが人間に感染することはありません。
症 状


・発熱
・リンパ節腫脹
・下痢
・血液検査→白血球減少

・外観上は無症状
・猫エイズ抗体検査は陽性

猫エイズ感染猫の30%はこの時期に来院
・慢性口内炎、歯肉炎
・リンパ節腫大
・慢性副鼻腔炎
・慢性皮膚炎
・慢性腎炎
・貧血

・体重減少
・免疫不全
・腫瘍の発生(悪性リンパ腫、扁平上皮癌)
FIV感染猫は腫瘍の発生率が高くなります。リンパ腫や白血病は健康猫に比べ約6倍も高くなります。
治 療

支持療法と二次感染に対する治療が主体となります。
ストレスの少ない環境での飼育管理により長期間生存させることができます。
予 防

・室内飼育にする。
・去勢不妊手術をする。
・ストレスの少ない環境での飼育
猫エイズワクチンありますが、感染阻止率は70%といわれています。接種の是非に関してはさまざまな意見があります。
当院ではこのワクチンは取り扱っていません。

猫伝染腹膜炎

猫伝染性腹膜炎は

猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスにより引き起こされる感染症です。
猫伝染性ウイルスは病原性の低い猫の腸コロナウイルスが体内で強い病原性を示す猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異したものです。
猫伝染性腹膜炎は発症すると数日から数ヶ月で亡くなってしまう致死率の高い病気です。
症 状

ウエットタイプとドライタイプの二つの型に分類されます。
ウエットタイプ

・抗生剤に反応しない発熱
・食欲不振
・体重減少
・元気消失
・腹水、胸水→呼吸困難
病原性が高く、多くの場合、兆候が見られてから2か月以内に死亡してしまいます。
ドライタイプ

・抗生剤に反応しない発熱
・食欲不振
・体重減少
・元気消失
・眼症状→ぶどう膜炎、虹彩炎
・神経症状→マヒ、ケイレン
・腎障害
・肝障害
・消化器症状
ウェットタイプに比べ、やや慢性的な経過をたどる傾向があります
治 療

プレドニソロンをはじめさまざまな薬が報告されていますがこれらは症状を緩和する作用はありますがウイルスそのものに対する効果はありません。
2019年にカリフォルニア大学デーヴィス校のPedersen博士らのグループによって、核酸合成を阻害する新規物質(GS-441524)がFIP罹患猫に高い治療効果を示すことが報告されています(2019. J. Feline Med. Surg. 21. 271-281)
未承認薬ですがFIPの治療に最も期待される薬です。